新NISA「ニュース」
新NISAスタート直前対策! なぜ一括投資ではなく積立投資なのか?
2024年1月にスタートする新しいNISAをきっかけとして、初めて投資をするという方も少なくないと考えられる。初めて投資をする方々に対して、一般的に「投資の心得」として伝達されるのが、「長期・分散・積立」という3つの投資行動だ。このうち、「長期(投資)」は勝つか負けるかの短期勝負ではなく、長期に着実に資産を増やすことを考えるべきということ。そして、「分散(投資)」は将来がわからない投資で何か1つに投資するとその価格が下落することがあるので、複数の投資先にいろいろ投資することによってどれかがダメでも他に良いものがあって全体として大きく負けにくくなるということなので、それぞれ意図することがわかりやすいのだが、なぜ「積立(投資)」まで薦められるのだろうか?
「積立」とは、「毎月1万円ずつ25日に投資する」など、一定の金額を一定の間隔で継続的に投資することをいう。このメリットの1つは、「まとまった資金がなくても少額で投資を始めて、将来の資産形成ができる」ということが大きい。たとえば、株式への投資を考えて「トヨタ自動車の株式を買いたい」と思っても、証券会社で一般的に受け付ける最低投資金額は株価2735円(11月21日終値)の100倍(単元株が100株であるため)で、27万3500円になる。手元に投資可能な資金が10万円しかない場合、追加の資金を用意しなければ株式を購入できない(証券会社によっては、1株で購入できたり、単元株よりも小さな株数で購入できるサービスもある)。その点、投信の場合は、原則として1万円から投資でき、「積立投資」の場合は、5000円や1000円など、より小さな金額で始められるようになっている。「まとまったお金ができるまでは投資ができない」とあきらめる必要がない。
また、「積立」は購入タイミングを分散するという効果もある。投信の時価である「基準価額」は毎日変動する。可能であれば、できるだけ安い価格で購入したいと考えるだろうが、価格変動のある投信では「安い価格」がいくらなのかわからない。1万円の基準価額が9500円になれば安くなったといえるが、それは、8000円になるかもしれない。将来的に8000円になるのであれば、9500円は決して安くない。もっとも、8000円まで下がると決まっているわけでもないので、8000円になるのを待っていたら、基準価額が1万2000円になってしまったということもある。タイミングを計って購入するというのは難しい。この点、「積立」は毎月定期的に投資を行うため、毎日変化する基準価額について、購入を続けている期間について最高値でもなく最安値でもない概ね平均的な価格で買うことができる。そして、タイミングを待ってたことによって「結局買いそびれる」ということがない。
さらに、大きな効果としては、継続的に買い続けることによって、購入金額が平準化され、投資金額に対して評価額が大きなマイナスになりにくいという投資成績を維持できることになる。たとえば、「積立」を始めて以降に、投資している投信の基準価額が毎月のように下落したとしても、その下落した価格でも買い続けるため、結果的に平均購入単価は基準価額が下落するほど安くなっていくことになる。その結果として、投資評価額が積立投資元本を割れにくくなっていくという効果がある。価格の下落時に、大きな評価損を抱えないということが投資で成功を実現するために大きな力になる。投資は、長く続けることが大事だからだ。特に、株式を対象とした投資のように、投資先そのものに価値向上の期待があり、かつ、配当などのインカムゲインの期待もある資産については、長く投資し続けることによって投資収益を獲得する期待が高まる。
株価は短期的に20%、30%という大きな下落を経験することがある。一括投資をして100万円を投資していた場合、30%の下落を経験すると評価額は70万円以下になる。100万円が短期間に70万円になってしまうと、「投資は怖い」という意識が強くなって、「元本近辺まで価格が戻ってきたら売却しよう」という考えになってしまうものだ。そして、そうした大幅な下落を経験した人は「二度と投資などしない」と決心してしまったりする。ところが、マイナス幅が10%程度に収まり、しかも、すぐに評価額がプラスに転じるようであれば、「投資をやめてしまいたい」と思うほどに追い込まれた気持ちにはならないだろう。この「追い込まれた気持ちにならない」ことが重要なのだ。
たとえば、2007年10月に設定された「キャピタル 世界株式ファンド」を設定当時から毎月1万円の積立投資をした場合の推移をみてみよう。このファンドは設定のタイミングが非常に悪く、設定当初に「リーマン・ショック」という100年に1度といわれた大暴落を経験し、長らく投資パフォーマンスが低迷した。基準価額は設定時の10000円が、設定から1年半後の2009年2月には4051円に下落している。基準価額が1万円を回復するのは2014年11月のことだ(月末ベース)。設定時に同ファンドを一括して購入した場合、7年間にわたって評価損の状態を続けることになった。このような投資結果に耐えられるだろうか?
ところが、積立投資をした場合、設定からしばらくはマイナス評価の日々が続くが、設定から2年後の2009年12月にいったん投資評価額がプラスに転じる。これは、基準価額が半値以下に落ち込む過程で、毎月1万円ずつをコツコツと買い続けた結果だ。一括投資のように、ずっとマイナス評価が続くよりも一時的にしろプラス圏に浮上することがあれば、投資を継続することができるのではないだろうか。そして、2012年11月には投資評価額がプラスに転じ、その後はマイナスになることなく、ずっとプラス圏をキープしている。2020年3月の「コロナ・ショック」の時にもプラス圏を維持し続けた。そして、2023年10月末現在、投資元本193万円に対し、積立投資評価額は約511万円と元本に対して2.6倍の資産を作ることができた。16年間という長期にわたって投資を継続できたから作ることができた資産額だ。
もちろん、例にあげた投資成果については、「キャピタル世界株式ファンド」が、アクティブファンドとして全世界株式インデックス(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)を上回る成績を残してきた優れたファンドであったため、大きな成果につながったという側面はある。どんな投信を選んでも、このような成果になるとは言えないが、成長する資産を選ぶことによって、積立投資は投資を継続させる力になり、長期の投資を実現することによって資産形成も可能になる。これから投資を始める方には、ぜひ、「長期・分散・積立」を意識した資産運用プランを立てていただきたい。(グラフは、『キャピタル世界株式ファンド』を設定来1万円の積立投資を行った場合)
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